それで終わりじゃないでしょ

はらぺこあおむしのごとき私の齧り跡を並べています

術後③ペースメーカーと頻拍のお守り

つづきです。

harapekoikko.hatenablog.com





詳しい説明は割愛しますが。
子どもの頃にしたフォンタン手術(APCフォンタン)による循環動態により長年右心房に負荷がかかっていました。そして傷んだ右心房から不整脈が出るようになりました。
今回した TCPC conversionというのは右心房を使わないで下大静脈から肺動脈へ人工血管でつなぐというものです。そこで使わなくなった右心房の壁を一部(先生は大部分と言っていましたがどうなんでしょう?)切り取りました。
右心房というのは心臓の拍動の大元の電気信号をつくる洞結節というところがある場所です。
その右心房を切り取ったため、自分の脈は40bpm(回/分)しか出なくなりました(徐脈)。
これは想定されていたことのようで、ペースメーカー埋め込み術を同時にして対処してもらいました。
(TCPCフォンタンの循環になると解剖学的に開胸手術をせずにはペースメーカーのリードを埋め込めないので、開胸するこの機会に同時にという理由もあります。)

私はペースメーカーを埋め込むことはわかっていましたが、そんなにがっつり使う訳ではないのかなー将来のための意味合いが強いんだろうなーと思っていたのです。
が、術後ICUで初めてのペースメーカーチェックをした時に、自脈が40になったことを聞き「今ほとんどペーシングだよ」と聞き、えー!と軽い驚きがありました。
ちょっとだけ機械に支配されてしまった感…。いえいえ、ありがたいことなのですが。


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私に埋め込まれたペースメーカーは脈のリズムを保つペーシング機能のほかに、抗頻拍ペーシング(ATP)機能がついています。頻拍が出たらそれより速いパルスを出すことで頻拍を止めてくれるそうです。
私の場合は脈を70〜130という設定にしていて、70以下にならないようにペーシング、130以上になったらATPが作動して停止させるという至れり尽くせりな状況に。

私に出ていたのは発作性心房頻拍(粗動、細動)で心室頻拍に比べたら緊急度は低いのですが、フォンタン循環という特殊な循環ゆえ頻拍に弱いということと、心房細動で200以上の脈になったことがありそうなると心室性の不整脈に移行する恐れがあるということで、今回このように大事大事♡にしてくれたようです。

術中に一度頻拍があったそうですが、術後初期は全然無くて、とりあえず今のところATP機能は「お守り」みたいなものだなぁと思っていました。


ところが前回の記事に書いたように、リハビリ後に出ました。
そして翌日の朝体重を測りに行ったらまた出ました。
ちょうどその日にペースメーカーチェックが予定されていて、チェックしてもらったところ頻拍が出てATP作動したのが4回。
術後1ヶ月は出やすいと言われており、まあこんなこともあるよねという感じだったのですが、、
その翌日から3日ほどだったかな?怒涛の頻拍祭りが開催されました。
頻拍が起きてATP作動して止まる、と思ったらまた起きてまた止めてまた起きて止めて…と止めても止めても出てくる頻拍。攻撃しても何度も蘇ってくるゾンビみたいに感じられて、なんだか気持ちがわるかったです。
止まるからいいんだけど、、それにしても脈がバクバクしたり戻ったり忙しくて、ガラにもなくなんだかグッタリ疲れてしまいました。

それでも祭りはだんだんと落ち着いてきて、その頃にまたペースメーカーチェックしてもらうと100回以上出ていたことがわかりました。
あー気のせいじゃなかったーと思いました。病棟のモニターでも確認できているからもちろん気のせいではないのですが、私の感じた忙しさが数字になって出てきてちょっとホッと?しました。
自分の脈が出て期外収縮が起きるとそれが引き金になって頻拍が起こるとのこと。リハビリなどで動き始めて労作が増えたことにより自脈も増え、それによって祭りが開催されていたようです。
そこでペースメーカーの設定を 70〜130 から 80〜130 に変えてもらいました。そして術前に飲んでいた薬の内服も再開。(抗不整脈薬は術後も結構しっかり飲んでいたのですが、なぜか術後β遮断薬は処方されていませんでした。)
80でがっつりペーシングしてくれるので自脈の出る幕が無く、それに伴って頻拍祭りは終わりました。






これが全能感ポッキリのキリの部分です(笑)
今考えると、術後急性期の想定し得たちょっとした出来事のように思えて、これでガックリくるなんて…とやや苦笑い。
ですが、自分の状況の急な変化に戸惑い一喜一憂していました。良い変化(酸素急上昇、循環もおそらく安定)でも、そこに合わせて自分像を確立していくには少し時間がかかるものですよね。



こうして劇的に頻拍が出なくなったのですが、先日外来の帰りに久しぶりに出ました。
外来でいっぱいほめてもらって(いい大人が。私いつも安定しているのでいつもほめてくれるのです。)とても順調!これからもう一段良くなってオペの影響が無くなってきたら今までと違う!って感じると思うよ〜ということで、また全能感復活!!早く仕事ーーー!となっていた帰りでした。

なんだか心が読まれてる?
行き過ぎないように見張ってくれているのかな。

ATPがお守りならば、頻拍も私にとってお守りなのかもしれません。